よぉ、母さん。
久しぶりに来てやったぜ。
っと、これ持ってきた。カーネーション。ほら、今日母の日だろ?花ぐらいあげなきゃ母さん怒りそうだし。
大の男がこんなでっかい花束買うのは結構恥ずかしかったんだからな。
感謝してくれよ。


今回はちゃんと色間違えなかったんだ。覚えてるか?昔俺が間違えて白いカーネーション買ってきちまって、大変なことになったっけ。…ははっ、「白のカーネーションは母親が亡くなってる場合に贈るものだ!」って、あの時のバージルの顔ったらなかったな。


そうだ、この前久しぶりにバージルに会ったよ。…すぐまた別れちまったけど。
まったく、あいつの身勝手ぶりにはあきれたもんだ。今度あいつが来たら母さんからも言っといてくれよ、可愛い弟が心配してる、ってな。


俺は…まあ、元気にやってる。
仕事の依頼もちょくちょく来るし、飯もちゃんと食ってる。相変わらずさ。心配しなくていい。




…。

…なんか、さ。




あの時、俺がもっと強くて、悪魔と戦う力を持っていたら、なんか違ってたのかな。
母さんは死なずに済んで、バージルもいて、父さんも…。
それで今日も皆で、赤いカーネーション、あげられたのかな。


…力、か。
バージルの考えは俺にはさっぱり分かんねえけど、あいつのことだからそういうことを色々小難しく考えてたのかな。




…。
まあ、いいや。今のなしなし。


あ、そういや、花屋に母さんの好きだった花が出てたぜ。いい匂いのする、白とか紫の小さい花。名前何だったっけ。
思い出せねえけど、今度はあれ持ってくるよ。


ったく、あいつも俺を見習って、今日くらい花でも持ってくりゃいいのにな。 いったいどこほっつき歩いて…





……。







…はは、なんか、あいつらしいや。ちゃんと来てんじゃねえか。
分かりにくいったらありゃしねえ。





また、意外と近いうちに会う事になるかも知れないな。
そん時は一言言っといてやろう。







墓の掃除もいいが、せめてカーネーションの1本くらい置いてけ、ってな。










戻る