再びフォトスフィアにて。

「それで、マザーに相応しい花は見つかったのか?」

ジークフリードが尋ねると、あちこちが焦げて煤だらけになったゼットが嬉しそうに答えた。

「モチのロンよッ!ひどい目にあったが、色々と探してるうちに、Smartな俺はジークのダンナが言わんとした真のイミに気付いたのさッ!」
「真の…意味だと…?」

言った張本人でありながら、何のことか皆目見当のつかないジークフリードは、訝しげに問うた。

「おうともよッ!俺が思うに、俺達のお袋さんは魔族の母、戦いこそ全てで、戦いの象徴といってもいい存在だ。そうだろ?だから相応しいっつったら、やっぱり戦いに関係のある花だろうと俺は思ったわけよ」
「む…道化にしては真っ当な見解だ」

上司の同意を得て、ゼットは得意げに結論を述べる。

「つまり、お袋さんに相応しい花ってのはだ、戦いの中で華麗に舞い咲く戦場の華、すなわちこの俺ってことじゃないか!」
「……」
「いやあさすがジークのダンナ、深いねえ!このことにいつか俺が自分で気付く事をお見通しで、こんな任務を言いつけたんだろ?これくらいの謎掛け、ナイトクォーターズ候補たるもの解けて当たり前ってか?」
「…つまり、手ぶらで帰って来たと」
「ん?おう。
しかし俺のことを戦場の華なんて嬉しい事言ってくれるねダンナも!まあそれだけ俺様の日頃の地道な働きが実を結んできたって事か!なーっはっはっはっはっは!!」
「…なるほど」

もしゼットが注意深く上司を観察していたならば、彼の声のトーンがいつもより低い事に気付いたであろう。しかし彼はついにその変化に気付く事は出来なかった。

「道化。この度の働き、ご苦労であった」
「当然のことをしたまで…え?」

上司の手には、いつの間にか魔槍グラムザンバーが握られている。

「だ、ダンナ…?」
「どうやら貴様は、戦場の華と散る事をお望みらしい。ならば今回の貴様の働きを評して、その願い、我が直々に叶えてやることにしよう」

言いながら、ジークフリードはゆっくりと、手にした魔槍を振り上げた。

「ちょっ…タンマッ!!!」
「散華せよッ!」

グラムザンバーから、七色の光がほとばしった。


そして、フォトスフィア内には本日2度目となる員数外の魔族の断末魔が響き渡ったという。





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