幼い頃、我は亡き父と母の望みである、人間とベルーニの橋渡しとなるべく、
両種族の共存の糸口を探っていた。

このままファルガイアに拒まれてベルーニが滅んでゆけば、
我のベルーニとしての半身も共に朽ちゆき、
だからと言って療養のためにロクス・ソルスに長く留まれば、
今度は我の人間としての半身が蝕まれる。

どちらにしろ、自分はこの世界に長く生きることはできない。
それでも我は、最期の時が来るまで、
父と母の望みを叶えようと、そのためにできる限りのことをしようと、
ただひたすらに思っていた。



けれど、共存など所詮夢物語に過ぎぬのだと、あの日、彼らが教えてくれた。
彼らは、両種族の間にそびえ立つ壁に阻まれ、味わってきた多くの絶望を我に語った。
また、彼らは繰り返し言った。
人間とベルーニの橋渡しとなるなど不可能なのだと。
叶わぬ夢など諦めるべきであると。
そして、

やがて滅びゆく身なれば、せめて最期に、
人間もベルーニも、塞ぐ壁ごと全てを平等に無に還すことこそ我が使命であり、
望みなのではないかと。



我は人間でもなければ、ベルーニでもない。
どちらとも相容れぬ、狭間に生きる者。
いずれの種族も、世界も、我を拒む。
きっと、この世に我が命を留めておく事ができるのも、残りわずかであろう。

だからこそ、

我と、そして我の裡に在る者達全ての望みを、ここに叶えようと思う。










すべてを 無に。















そうして焼けた野原に独り立ち

最後に残った世界[ファルガイア]の残滓に拒まれながら

ともに、ゆるゆると朽ちていくのもよかろう。










さあ、

終焉[おわり]の宴を始めようではないか。



























なれど 人間とベルーニの共存を誰よりも望んでいたのは
他ならぬ 我自身ではなかったか?





























もどる